オフィスチェアを選ぶ際、外観や機能の多さに目が向きやすいが、座り心地に大きく影響するのは、素材や内部構造といった「見えにくい要素」である。同じ価格帯のモデルであっても、クッション素材の種類やフレームの構造、張地の特性によって、座った際の感覚は大きく異なる。座面は「内部のクッション材」と「外側の張り地」で構成されているが、素材によってはクッション材がなく、張り地そのものが座面の代わりをしている製品もある。

これは、自動車のシートに例えると分かりやすい場合がある。見た目が似ていても、シートの内部構造や素材が異なれば、長時間のドライブ後の疲労感には明確な差が生まれる。オフィスチェアにおいても同様のことが言え、表面的なスペックだけでは座り心地を正確に予測することは難しい。また、座面の素材だけでなく座面の厚み自体も座り心地に影響する。薄い座面は軽量でコンパクトになるメリットがある一方、クッション性が不足し長時間の使用で底付き感が生じやすい。逆に厚みのある座面はクッション性が高いが、座面高が上がるため小柄な方には合わないこともある。

素材と構造が長時間使用に与える影響

座り心地は、座った瞬間の印象だけでは評価できない要素を含んでいる。椅子の素材や構造が影響するのは、むしろ使用開始から数時間が経過した後の感覚である。最初は快適に感じたクッションが、時間の経過とともに沈み込みすぎて腰が安定しなくなったり、蒸れて不快感が増したりすることは珍しくない。ウレタンフォームは密閉性が高いため、長時間の着座で蒸れが気になるケースがある一方、通気性に優れるメッシュ素材は冬場に冷たさを感じることがある。

そのため、素材や構造の特性を理解しておくことは、長時間の使用を前提とした椅子選びにおいて重要な意味を持つ。カタログ上のスペックには表れにくいこうした違いが、日常的な使用感の差として現れてくる。

主要な素材・構造とその特性

座面クッションの素材

オフィスチェアの座面に使用されるクッション素材としては、ウレタンフォームが最も一般的である。ウレタンフォーム(スラブウレタン)は柔らかく沈み込みすぎず、適度な弾力があり、長時間座っても痛みが生じにくい。軽量でコストパフォーマンスにも優れており、幅広いタイプのオフィスチェアに採用されている。ただし、密度が低いものは長期間使用すると座面がヘタリやすく、底付き感が出る場合がある。

モールドウレタンは、金型に液状のウレタン原料を流し込んで成形するため、密度が均一で形状の自由度が高い。弾力性と復元性が高く、長時間座っても型崩れしにくいため、耐久性を重視するチェアに多く使われている。身体のラインに沿った形状で成型しやすく、部位によって硬さを変える設計にも対応できるのが特長である。高機能チェアでは「異硬度クッション」として、支えるべき部分は硬く、圧迫されやすい部分は柔らかくすることで、体圧の偏りを抑える工夫がなされている製品もある。

このほか、高弾性ウレタンや低反発ウレタンなど、反発特性の異なる素材もある。高弾性タイプは姿勢変化に追従しやすく、動的な座り方との相性が良い。低反発タイプは体圧分散に優れ、静的な座り方で体重を均等に受け止める効果が高い一方、蒸れやすく復元に時間がかかるという特性がある。使用する場面や季節によって最適な素材が異なるため、自身の使用条件に照らして判断することが望ましい。

張地の種類と特性

張地の主な種類としては、メッシュ、ファブリック(布地)、合成皮革、本革などがある。それぞれに長所と短所があり、使用環境や好みによって適切な選択は異なる。

メッシュ素材は通気性の高さが最大の特長であり、長時間座っていても背中や太ももが蒸れにくい。高強度・高弾性のメッシュを金属フレームに張り巡らせて形成する構造で、座る人の体型に合わせて伸縮するため体圧が分散されやすい。一方で、品質によってはメッシュがたるんだり、細身の体型だと座面の沈み込みカーブが急になり安定感に欠けると感じる場合もある。メンテナンス面では汚れが拭き取りやすいという利点がある。

ファブリックは肌触りがよく、カラーバリエーションが豊富であるが、汚れが染み込みやすく手入れに注意が必要である。合成皮革は見た目の高級感と手入れのしやすさが特長であるが、通気性が低く、長時間の使用では蒸れが気になるケースが多い。なお、背もたれはメッシュ、座面はクッションというハイブリッドタイプも広く普及しており、通気性と座り心地の安定感を両立する選択肢として注目されている。

フレーム構造と座面の支持方式

椅子のフレームには、スチール(鉄)、アルミニウム、強化樹脂(ポリプロピレン、ナイロンなど)が使用される。スチールフレームは剛性が高く安定感があるが、重量が増す。アルミニウムは軽量かつ高剛性で耐腐食性にも優れるが、コストが高い傾向にある。強化樹脂は軽量でコストパフォーマンスに優れるが、耐久性では金属フレームに劣る場合がある。

座面の支持方式にも注目すべきである。座面全体を板状のベースで支える方式と、弾性のあるバンド(エラストマーバンドなど)で支える方式がある。バンド式は座面にしなりが生まれるため、体圧分散性が高まり、動的な座り心地が得られやすい。なお、フレームの設計は椅子の重量にも直結する。在宅勤務で使用する場合など、椅子の移動や持ち運びが頻繁に発生する環境では、強化樹脂やアルミフレームの軽量さが実用上のメリットになることがある。一方、オフィスの固定席で長期間使用する場合は、重量よりも剛性や耐久性を優先した選択が合理的といえる。

脚部とガスシリンダー

脚部は安定性と耐久性に関わる要素である。一般的な5本脚(スター型ベース)には、ナイロン樹脂製とアルミダイキャスト製があり、後者の方が剛性と耐久性に優れ、見た目の質感も高い。ガスシリンダーは座面の高さ調整を担う中核部品であり、国際規格に適合した信頼性の高いものが使用されているかどうかは、安全性の観点からも確認しておきたいポイントである。

素材選びにおける注意点とよくある誤解

「メッシュが最良」「本革が最高級」といった単純な優劣関係は、オフィスチェアの素材には当てはまりにくい。各素材にはそれぞれトレードオフがあり、使用環境や個人の優先事項に応じて最適な選択は変わってくる。通気性を重視するならメッシュが適しているが、保温性を求めるならクッション素材の方が合っている場合もある。

また、同じ「メッシュ」や「ウレタン」でも、品質やグレードに幅があることを認識しておく必要がある。座面メッシュのチェアが高価格帯に多い理由は、人間の体重をメッシュ生地一枚で支えるために高度な技術が必要だからである。安価なメッシュ製品では耐久性に難がある場合もあるため、素材名だけで判断するのは避けた方が良い。

素材や構造に関するより専門的な情報を得たい場合は、オフィスチェアの素材にこだわりを持つAerlixのような専門メーカーの製品情報も、理解を深める上で参考になることがある。

まとめ

オフィスチェアの座り心地は、外観やスペック表だけでは判断しにくく、クッション素材の種類、張地の特性、フレーム構造、座面の支持方式といった内部の設計要素が複合的に影響している。ウレタンフォームとモールドウレタンの耐久性の差、メッシュ素材の品質による性能差、ハイブリッド構造の利点など、素材ごとの特性を理解した上で選定することが重要である。一つの素材や構造に「正解」があるわけではなく、自身の体格・使用環境・優先する特性を照らし合わせて判断することが、満足度の高い椅子選びにつながると考えられる。

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